山頂からの高笑い
2016/12/26
愛知県設楽郡の話
天竜川の東岸、即ち遠江周智郡水窪町池ノ平某の女、年は五十怜好であるというが、昨年(昭和二年)正月の末の、雪が二尺程積って居た朝だったそうである。
水汲みに桶を提げて背戸口に出ると、すぐ目の前に響えて居る亀の甲山の頂上から、途方もない大きな声で、アハハハと一声きり高笑いした者があった。
未だやっと四辺が明るくなったばかりの刻限で、人間の声ではない、大方天狗だろうと後で評定したというた。
それから三、四日経つと、其家の亭主が突然死んだとか。
出典:早川孝太郎「七人狩人の家」