鷹匠が山神の祟りに逢って死ぬ話
2015/08/26
遠野物語より 管理者による超訳
遠野の町に山の事に詳しい人が居ました。
元々は南部男爵家の鷹匠をしていた人です。
街の人は「鳥御前」とあだ名をつけて呼んでいました。
鳥御前が年取って後、茸取りに一人の連れと向かいました。
山に入ると、二人は別れ別れになり鳥御前は山を少し登りました。
時刻は夕方に差し掛かったころでしょうか。
ふと大きな岩の陰に赤い顔の男女が立って何か話しているのに出会いました。
彼らは鳥御前の近付くのを見て、手を広げて押し戻すような動作をしました。
しかし、鳥御前はそれにも構わず近付いて行きました。
女性の方が男性の胸にすがりました。
様子を見るに普通の人ではなさそうだから、ちょっと脅かしてやろうと鳥御前は腰の刀を抜いて打ち掛かるふりをしました。
男の方が足を上げて蹴りかかるかと思ったところ、たちまち鳥御前は前後不覚となりました。
連れが探すと、鳥御前は谷の底に気絶していました。
家に連れて帰って一部始終を語るところによれば
「こんなことは今まで一度もなかった。おれは今回の事で死ぬかもしれない。
今日の事は、ほかの者には言うな」
そう言って、3日ほど寝込んだのちに死んでしまいました。
家の者はその死に方が不思議だったので、山伏のケンコウ院という人に相談したところ、「山の神が遊んでいたところを邪魔したため、祟りをうけて死んだのだろう」と言ったという事です。
出典:http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html 遠野物語