山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

子供の頃森の奥深く入ったら

      2015/12/14

600: 本当にあった怖い名無し 2005/03/28(月) 20:11:05 ID:J1tS7o4h0
子供の頃の話。30年以上前のことです。

私が生まれ育ったところは、武蔵野の面影を残す森や林が多いところでした。
夏になればカブトムシやクワガタがたくさん捕れ、早朝や夕方に友達と一緒に
森に入ったものです。あれは小学校の高学年になった頃だったでしょうか。
いつものようにカブトムシを捕りに行こうと集まった私たちは、今まで入った
ことのない深い森に行ってみようということになりました。

その森の入り口は、線路のすぐそばでした。都心へと続くこの路線は
この付近で両側が森となり、運転手の目を休ませるのだそうです。
森の入り口で自転車を乗り捨てた私たちは、歩いて森に入りました。
カブトムシが目的ではありましたが、初めて入る深い森ということもあり、
何か冒険にでも行くような気持ちだったのを覚えています。時刻は夕方の
4時頃だったでしょうか。私たちは森の中へと続く道を進むと、カブトムシが
いそうな木を見つけては道から外れ、次第に森の奥深くへと入っていきました。

601: 本当にあった怖い名無し 2005/03/28(月) 20:11:39 ID:J1tS7o4h0
どれくらい経ったでしょうか。私たちはいつしか、電車の音が聞こえなくなって
いることに気づきました。不安になった誰かが「帰ろう」と言いました。
異論はなく、私たちは帰ることにしました、しかしまわりを見渡しても、「道」は
ありません。カブトムシに夢中になっていた私たちは、いつの間にか道から遠く
外れていたのです。あたりはすでに薄暗く、うっすらと霧がかかっていました。
いったい「道」へ出るにはどうすればいいのか・・・? 霧に音が吸収されて
しまうのか、あたりはしーんとして、物音ひとつ聞こえません。私たちは道だと
思う方向へずっと歩いていきましたが、一向に道に出ることはありませんでした。
やがて一人が突然座り込み、泣きべそをかきはじめました。その不安な気持ちは
一瞬で全員へ伝わりました。私は泣きたいのをぐっとこらえ、森を見上げました。

おかしい、何かが違う。私はそう思いました。この森に入るのは初めてだったけど、
近所の森には何度も入っているし、迷ったことも一度や二度ではありません。
しかしそのときは、その森に何か得体の知れない違和感を感じました。
何がおかしいかって、夏の夕方なのにヒグラシが鳴いていなかったのです。
蝉の声が聞こえない夏の森。私は、迷ったこととは別の恐怖を感じました。
その時です。森の奥から何か物音が聞こえたような気がしました。
泣いている友達に「しっ、だまって!」と言うと、全員で耳を澄ませました。
すると、確かに音が聞こえます。

602: 本当にあった怖い名無し 2005/03/28(月) 20:12:23 ID:J1tS7o4h0
ちん、どん、じゃーん、ちん、どん、じゃーん、ちん・・・。それは、鐘や太鼓、
どらの音でした。「わーー、出た! おばけだー」。一人が叫びました。
全員がパニックになりました。しかし、ひとしきり騒ぎが収まって冷静になった
私たちは、その音の方に行ってみようということになりました。
あたりはいよいよ暗くなり、足下もおぼつかなくなった私たちは、音の方向に
必死に歩いていきました。ちん、どん、じゃーん、ちん、どん・・・。
音は遠くに聞こえたかと思うと、急に近くで聞こえることもありました。
私たちは恐怖も忘れ、音の正体を探ることも忘れ、まるでその音に導かれるように
歩きました。どれくらい歩いたでしょうか。疲れ果てた私たちは前方に電車の音を
聞きました。それに続いて、暗闇を切り裂く電車のヘッドライトを見たのです。
そう、私たちは入り口近くへと戻っていたのでした。もうすっかり夜になっていました。
あの鐘の音は、もう聞こえませんでした。

家へ帰った私は両親に怒られました。こんなに暗くなるまで、どこへ行ってたんだ?
森の中で道に迷って、そしたら鐘や太鼓の音が聞こえてきて・・・。
私は泣きながら言いました。すると父が急に黙り、「そうか・・・」。
そうして私の頭を撫でると、「よかったな」と。

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出典:http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1107404112/