山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

泉を見ている時呼ぶ声が遊歩道からよく聞こえてきた

      2017/04/04

26: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/12/17(土) 22:23:00 ID:z8VRgVH30
遊歩道から外れた林の中、ぽっかりと陽が当たっている。
そこには透き通った水がたたえられた泉があり、浅い水底では
何箇所かで砂が柔らかく噴き上がっている。
不思議と、見ていて飽きることがない。
良い景色を望むなら、他にいくらでも場所はあるが、自分でも
不思議なほど、ここが好きだ。

この泉を知る人はそう多くない。
ましてや、こんなに気に入っている者など、そうは居まい。

最初のうち、俺を呼ぶ声が遊歩道からよく聞こえてきたが、
そんな声に興味などなかった。
この場所に居ることを知らせることさえ億劫だった。
ただただ、泉を眺めていたかった。
俺を見つけ、多くの人が集まり、ひとしきり騒がしかったが、
やがて皆が引き上げ、俺は一人残され、水底で吹き上がる砂の
動きを目で追い続けた。

空は朝、昼、夜と明るさを変え、森は春夏秋と色を変えた。
真っ白な冬が来てすぐ、友人が来た。
随分前に山ではぐれ、それきり会っていなかったことは、
彼の姿を見るまで忘れていた。
ガスに巻かれ、彼とはぐれたことは思い出せた。
その後、俺はここで泉を眺めて過ごすようになった、と思う。

27: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/12/17(土) 22:23:43 ID:z8VRgVH30
彼は俺を見ずに俺に声をかけ、俺は彼に声をかけた。
なぜここに来たのかと、彼は俺に問いかけ、俺はここが
好きだからだと答えたが、彼は同じ問いを発し続け、最後に
酒を(もったいないことに)地面に撒いて帰った。
今までどこに居たのかという俺の問いに、彼は答えなかった。

彼はたまに来る。
たまに来ては毎度、地面に酒を撒いて帰る。
カメラを担いでやってくる男たちもいる。
三脚を据え、何枚かの写真を撮影する。
俺にカメラが向けられることがある。
笑ってみせるが、写真に俺は写っていないだろう。
そんな気がする。

そしてこれからも、きっと俺は泉を見つめて過ごす。
満ち足りた気分で。

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