山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

古びたザイルが俺の右側に力なく垂れていた

      2016/04/02

128: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/12/26(月) 23:47:22 ID:b6seVmxY0
垂直な岩に四肢を張り、ゆっくり登っていた。
大きく、高い岩壁だった。
過去、数人が転落死している。

古びたザイルが、俺の右側に力なく垂れていた。
誰かが使ったザイルに違いない。
使ったザイルを回収できない理由は、そう多くない。

俺よりも上、新しいザイルを固定しながら先頭を行く友人は、
この古いザイルを見て何を思っているだろう。

友人と先頭を交代する予定の、大き目の岩棚まで登ると
予定通り友人が居た。
ここからしばらくは俺がトップで登る。
息を入れ、強張った筋肉をほぐし、ここから先のルートを
打ち合わせた。

すぐ右に垂れているザイルが目指したルートを見極めようとした時、
そのザイルに力がこもった。
わずかな風にそよぐだけだったザイルが、鋼のように硬くなった。
ちりちり、と小さな音を立て、小刻みに揺れ始めた。
時折、びん、という音を立て、大きく揺れた。

129: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/12/26(月) 23:47:58 ID:b6seVmxY0
そのザイルは長い。
岩に隠れ、垂れ下がった下の方までは見えなかったが、
目の前で揺れるザイルは、意志を持った何者かを、明らかに
支えていた。
息づかいさえ感じる。

きしきしと軋みながら、わずかにザイルがねじれた次の瞬間、
しゅるるる、と軽やかな音が伝わり、空気が弾けた。
ほんの数センチ、ザイルが跳ね上がり、力が抜け、
だらりと垂れ下がった。
どうやら、終わったらしい。

友人が煙草に火をつけ、岩棚に置き、俺はポケットから
行動食のチョコレートを出し、煙草の横に置いた。

俺は大きく息を吐き出し、手を伸ばし、登り始めた。

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