山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

大きな木に囲まれたその場所には墓石があった

      2016/01/23

30: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/06/15(水) 23:51:36 ID:dsL5gb3h0
古く、大きな木に囲まれたその場所には、本で呼んだ通り、
朽ちかけた墓石があった。

その昔、この地に住み着き、50年ほどの間に周辺の山々に
多くの棚田を作り、開墾し、豊かな集落を築いた集団が居た。
ある日突然、集団で姿を現し、誰も興味を持たなかったこの地を
驚くべきスピードで開墾したのだ。
彼らは、工芸技術や歌舞音曲にも優れた才能を示し、この地を
支配していた豪族にも受け入れられた。

応仁の乱と呼ばれる騒乱が広がり、菜畑の虫のように日本各地を
蚕食し始めても、戦略的な意義のないこの土地は争いと無縁で、
村人は多くの実りを手にする事を考えていればよく、
そのために祈り、歌い、踊っていた。
遠くの空が真っ赤に焼けるような争いがあり、領主様が
変わったらしいという噂が立ったが、だからといって
自分達の生活が変わる事はあるまいと、彼らはのどかに
考えていた。

だが、新しい領主は多くの兵力を必要としており、そのための
手段として、集落ごとに兵力の動員数を割り当ててきた。
無論、彼らの村も例外たりえず、彼らの中から兵士として
選出された男達は、軍事訓練に駈り出された。

31: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/06/15(水) 23:54:32 ID:dsL5gb3h0
数週間後、訓練を終えた男達が村に戻った翌朝、
村は無人になっていた。
捜索が行われ、探索の手は領内全域に広がったが、彼らの
手がかりは見つからなかった。

もともと戦略的価値のない位置にあった村は焼かれた後に
放置されたが、墓地に切り花が絶えることはなかった。

そして今、一番近くの町からでさえ徒歩で6時間もかかるその墓地で
俺は、美しい花が供えられた、朽ちかけた墓石を眺め、
なかば呆然としている。

触れてみると造花ではない。

この山塊を3日かけて横断する予定だ。
彼らを見かけたり、あるいは会えるかもしれない。
予感とも期待ともつかない喜びに、少し胸が躍った。

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出典:http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1118674955/