雷に授かった子供の話
2015/08/26
日本霊異記 3話
「いかづちのむがしびを得て、生ましめし子の強力在りし縁」
昔、敏達天皇(古墳時代)のころ、尾張愛知の片輪の里という所に一人の農夫がおりました。
田んぼに水を引き入れていると小雨が降ってきたので、雨宿りのために木の下に隠れました。
農夫が鉄の杖を地面に突き立てていると、雷が轟きわたりました、
農夫がはっとして、思わず鉄の杖を振り上げました。
その時、雷が農夫の前に落ちてきて、小さな子供の姿となりました。
農夫が杖で突き殺そうとすると、
雷は
「わたしを殺さないで!かならず恩返ししますから」
と言いました。
「お前さんが、何をしてくれるというんだね」と農夫が問うと、
雷は
「あなたに子供を授けます。
ですから、私のために楠の木で水槽を作ってください。
そこに水を入れて、竹の葉を浮かべてください」と言いました。
そこで、農夫は雷のために言う通りにしました。
雷は「私に近寄ってはいけない」と農夫を水槽から遠ざけました。
するとたちまち霧を巻き起こし、あたりを曇らせて天へと昇って行きました。
その後、雷の言った通り農夫には子供が産まれました。
その子の頭には、恐ろしくも蛇が二巻き巻き付いて、頭と尻尾が後頭部に垂れ下がっていたということです。
出典:日本霊異記