山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

笛に呼ばれる二本足の虎

      2015/09/18

唐は安史の乱があったころの話。
長安に迫る戦火から逃れるため、時の皇帝玄宗はじめ宮中関係者は蜀の地に逃れた。
当時の宮中楽団に笛を吹く男がいた。蜀に逃れる途中、男は一人街道から外れ山中に迷い込んでしまった。
暗い山道に林立する巨木に月の明かりさえ見えない中を、男は何時間も歩き続けると古びた寺社の門が目の前に現れた。
男は何度も門を叩き声を上げたが、誰も答える者はいない。仕方なく、男は夜が明けてから道を探そうと門前で野営の準備を始めた。
住み慣れた都を遠く離れ、しかも一人山で道に迷った心細さから、男は寝入る前に笛を吹いた。
するとどうだろう、ほんの僅かにもれる月明かりを浴びて、深い木立から現れたものがいた。虎であった。
よくよく見ると普通の虎ではない。虎は後ろの二本足で立ち上がり、男に迫ってきた。
男は慌て、すぐに近くの樹によじ登ったものの、二本足の虎は二頭三頭と増え続けた。
妖怪の類だ、と男は樹からも降りれず、だからと言って何時までもじっとしているのも耐えられず震えていることしか出来なかった。
しばらく、何時間かたったと思ったころ、一人の老人が虎の間に表れるのが見えた。老人は虎たちを叱り付け、男を樹から降ろしてくれた。
老人は男を労うと、男の手にした笛を見て言った。
「この笛は妖魔を呼び込む。未熟な拵え物だ」と。

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