カバケの声
2016/12/25
408: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/01/16(月) 19:38:19 ID:otduFRv+0
知り合いの話。
山仲間と一緒に湿原を歩いていた時のこと。
遠くの方から「おーい」と呼ばわる声がした。
陰々と甲高いその声は、聞いていてひどく気味が悪かったという。
まるで人でないものが人の真似をしているような、そんな奇妙な感じがした。
どこから呼んでいるんだろう?
そう思ってキョロキョロ辺りを見回す彼に向かって、仲間が忠告した。
「反応するな。あれはカバケの声だろう。
呼ばれて行くと、沼に嵌まるっていう話だぞ」
カバケとは河童化けが訛った名称らしく、人を水に引きずり込む類いの妖怪
なのだという。
毎年、麓の川で上がる水死体の何人かは、こいつにやられたのではないか。
そう地元では噂していたそうだ。
二人揃って声を無視することにした。
湿原を抜けてからも声は彼らを追ってきたが、やがて聞こえなくなったという。