死を告げる山男の話
2015/08/26
遠野物語より 管理者超訳
和野の人菊池菊蔵という人が居ました。
その妻は笛吹峠の橋野から嫁に来た人でした。
この妻が実家へ行っている間に、糸蔵という5、6歳の息子が病気になったので、菊蔵は笛吹峠を超えて妻の実家へ行きました。
その山道は木も深く、特に遠野分より栗橋分へ下るあたりは、道がウド(狭い切通し)になっていて険しい崖でした。
日が崖に隠れて薄暗くなってきたころ、後ろから「菊蔵」と呼ぶものが居ます。
振り返ると崖の上より下を覗く者がおります。
顔は赤く目の光輝くことは前の話の山男のよう。
「お前の子はもう死んでいるぞ」
その者は言いました。
この言葉を聞いて菊蔵は恐ろしいよりもハっとしました。
すでに赤い顔は見えなくなっていました。
急いで夜のうちに妻と帰りましたが、子供は死んでいたという事です。
出典:http://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/52504_49667.html 遠野物語