山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

男が行き倒れになた時、会ったことの大人の女を見た

      2016/12/26

346: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/01/08(日) 09:29:35 ID:9+Cthtlt0
男が一人、行き倒れになっていた。
体力はとうに尽き果て、身体に雪が降り積もり、体温を奪い、
死ぬ運命にあることは明らかだった。
諦め、絶望しつつある中、彼は女の姿を見る。
若くはない。
これまでに会ったことのない、しっとりした大人の女。
彼女の腕に抱かれ、ぬくもりに満たされ、彼は意識を失った。

目覚めたとき、彼は女と二人で小屋の中に居る。
ここへ来て数週間、眠り続けていた。
衣服は彼女が手持ちのものを着せてくれていた。
すべき質問はいくつもあるはずだったが、彼の頭には質問が浮かばない。

桜が咲く頃、彼は回復し、いつでも下山できるようになった。
ぐずぐずと出発を遅らせる彼に女が寄り添い、ここに留まるよう懇願し、
ついに彼は同意する。
彼自身、これまで身を置いていた世界への不満は、いくつもある。
すでに捜索は打ち切られ、彼は死んだことになっているに違いない。
無論、命の恩人である女は美しい。
そうした一切合財が、彼に新たな人生を選び取らせた。

小屋の周囲には水場へ行く以外の道はなかったが、女はどこからか食料を
手に入れて来る。
毎日、あるだけの食料を食い尽くして床に就く。
翌朝、彼が起きると朝食が用意され、その日に必要な食料は小屋にある。

一度目の冬。
雪が降り、寒さは厳しかったが、小さな囲炉裏ひとつの小屋の中は暖かい。
ある時不意に、女は行き倒れが居ると言い出した。
場所は遠い。

347: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2006/01/08(日) 09:30:16 ID:9+Cthtlt0
翌朝、女は姿を消した。
消えたのは、女だけではない。
二人、寄り添って暮らした、つつましい小屋もない。
四角く除雪された山奥の木立の中、彼は眼を覚ました。
彼が身にまとっているのは、小豆ほどの甲虫だけだった。
数千か数万か、その数さえ知れないほど多くの虫に彼は覆われている。
下着さえ身につけていない。
彼は訳が分からないまま、誰にも知られることなく息絶えてゆく。
絶望しつつもなお、女が戻ることへの期待と寒さで、彼はその場を動けない。
そして、彼の頭は女への質問で満たされる。

自分をどうやってここまで運んだのか?
なぜ役所等へ届け出なかったのか?
そもそも、ここはどこなのか?
食料はどうやって手に入れていたのか?
女は誰で、なぜここに住んでいたのか?
なぜ行き倒れがいることを知ったのか?
今度の行き倒れを、どう扱うつもりなのか?

最初、虫は彼の体温を求め、死後は食料として扱った。

ここらじゃあ、その女を雪女って呼んでる。
話はそれで終わりだった。

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