ゲートの奥
ツーリングに行った時の話です
行きと違う道で帰ろうという話になって
暫く山道を走っていると
ちょっとした林の中に入りました
夏らしく蜩がメット越しでも
分る位に大きく鳴いています
先行する兄がバイクを端に止めたので
倣って止めると左側の雑木林の中に
鉄パイプで作られたゲートがあり
錆びきった看板に『~ハイキングコース』
と書かれていました
ゲートからは中途半端に舗装された道が
山頂に向かって伸びていますが
長い間放置されていたのか
雑草に覆われていました
欝蒼と生い茂る木々で日差しが遮られ
昼尚暗い場所に余りにマッチしていて
チープなホラー漫画みたいだったので
暫く指差して笑ったり
デジカメを撮ったりしました
まだ日も高いのでそこを登る事になり
二人でゲートをくぐると
兄にデジカメ持って行かないのか?と言われ
確かに上でも面白い物が撮れるだろうと思い
無意識にメットインに
閉まっていたデジカメを取り出すと
するっとデジカメが手を滑り地面に激突
メディアカードがいかれたのか
撮れない状態になってしまいました
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私は慎重なタイプの人間なので
このようなミスは滅多にしないのですが
壊れてしまったものはしょうがないと諦め
登山道を登り始めました
道は急勾配で膝を手で押しながら登る程でした
雑草や蜘蛛の巣を掻き分けながら
10分程登ると頂上に着きました
頂上には腐り果て原型を留めていない
木製のベンチとテーブル
真っ赤なペンキで塗り潰された標識がありました
DQNさんでもいらっしゃったのかなと
兄に言おうと思ったその時です
先程登ってきた道の左側
登山道より更に角度の厳しい位置から
「あぁ」
と子供と言うか赤ん坊の声が聞こえました
幻聴かと思い確認を取ると兄も聞いていました
どうしたものかと固まっていると再び
「あぁ」
と聞こえました、もう言葉は要りません
二人して一目散に登山道を駆け下ります
と言ってもとても急なので身体を横に向けながら
カニ歩きになったりしながらでしたけど
地面に白い液体が大量に撒かれているのを見ました
何だろうと思い兄を呼び止めようと思ったのですが
兄も怖かったのでしょう
既に遥か遠くに先行していました
取り残されるのが怖くて急いでその場を後にし
バイクの処まで辿り着きました
白い液体について兄に
登っていた時あった?と聞くと
無かったと言いました
膝を手で押しながら登る様な道だと
地面が目の前に有るので
二人して見落とす事は考え難いですよね
とにかく不気味だったので
さっさと帰路についたのですが
哀しいかな方向音痴
帰る方向に向かっていたはずなのに
また先程の山道に入ってしまいました
件の朽ちたゲートの前を通り過ぎる時
フルスロットルだったのはご愛嬌です