山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

アイヌ妖怪 キムナイヌ(つるっぱげ)

   

樺太の山中に「キムナイヌ※」(山の人)というおばけが住んでいる.頭がつるっ禿げなので,「ロンコロオヤシ」(禿頭をもつおばけ)とも称する.おばけといっても案外親切な連中で,山の中で荷物が重くて困っている時など,

アネシラッキ ウタラ  守り神さんたち
イカスウ ワ!!     手伝っておくれ

と叫べば,やって来て荷を軽くしてくれる.ただし,禿頭の話だけは禁物で,山中でうっかり禿頭の話などしようものなら,憤慨して山が荒れ,急に雨が降って来たり,どこからかだしぬけに木片が飛んで来たり,通りすがりに大木が倒れて来たりする.山中で風もないのに不意に大木ががらがらどっしんと倒れて来たら,それはこの連中のしわざだ.そういう際は,すかさず,

キムン ポネカシ  山の小父さん
ヤイカ ニー    お前さんの上に 木が
オツイ ナー    倒れて行くよ

と唱えれば,あわてて退散する.このおばけは,がらにもなく血を恐れるといい,里でも血を恐れる人をキムナイヌみたいだとからかう.

※ 「キムナイヌ」kim-un-aynu〔山・にいる・人〕,「キムンクッ」kim-un-kux〔山・にいる・神〕,「キモカイクッ」kim-okay-kux〔山・においでになる・神〕,「ロンコロオヤシ」ron-koro-oyasi〔禿頭を・もつ・ばけもの〕,「オケン」oken〔okem ; okep(つるっぱげ)〕など,種々の名をもっている.
 この連中は,また恐しく煙草ずきで,山の中で煙草をのんでいると寄って来る.山の神さんにさしあげますと言って,煙草を一つまみ二つまみ置いておけば害をしない.禿頭だといい,煙草を欲しがるといい,そこを突っこんで行けば,この連中の素姓が割れそうだ.古代の祭儀を司祭したえらい巫者に禿頭の人がすくなくなかったという言伝えが残っており,煙草は神へ捧げる供物として祭にはなくてはならぬものだったからだ.

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出典:http://www.aozora.gr.jp/cards/001529/files/52211_46229.html えぞおばけ列伝