山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

金貸しや質屋のような仕事も手懸けていた時、奇妙な客が来た

      2016/12/25

655: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/02/07(火) 20:12:33 ID:XookZKua0
知り合いの話。

彼のお祖父さんは、山奥の村で雑貨店を営んでいた。
昔はそれなりに立派な家柄だったせいか、ちょっとした金貸しや質屋のような
仕事も手懸けていたらしい。

ある年、何とも奇妙な客が来たのだという。
中肉中背の男、顔に見覚えはない。まず間違いなく村の住民ではなかった。
それなのに、どこかで出会った気がしてならない。
誰だろうと訝しく思いながら対応すると、言うことがこれまた奇妙だった。

「娘が輿入れすることになった。
 急遽まとまった額の金子が必要になったので、融通してほしい。
 しかし、自分にはこれと言って質草になるようなありがたい物はない。
 迷惑だとは思うが、一つこれで金を貸して貰えないだろうか?」
そう言って男が差し出したのは、枯れ木のように干からびた人の上腕だった。

その時初めて、男が片腕であることに気がついた。左腕がない。
正直気持ち悪いと思ったが、なぜか力になってやりたいと考えたお祖父さんは
男の言うままの額を、腕と引き替えに渡してやったのだという。
男はこちらが恐縮するくらい腰を低くして帰って行った。
帰った後で「はて、何でこんな頼みを聞き入れてしまったのやら」と自分でも
不思議に感じて仕方がなかった。

656: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2006/02/07(火) 20:14:20 ID:XookZKua0
(続き)
家族からも「不気味っ!」「詐欺だろ、それ」と非難されたが、かえって
意地になってしまい、責任を持って大切に保管したのだという。
もっとも、流したくとも流せるような品ではなかったのだが。

一年後、すっかり腕のことなど忘れ果てた頃。
件の男が再びお爺さんの元を訪れた。
不安そうな顔で、まだ腕はあるかと聞いてくる。
お祖父さんが油紙に包んだそれを出してくると、嬉しそうに言った。

「あぁ、ありがたい。やはり不便でな。
 仲間が都合してくれたんで、思ったより早く金が出来た。
 確認して返してほしい」
男が持ってきた額はちょっと多目だったが、まぁ利子だと思って貰って
おくことにした。金を納めて腕を返す。

と目の前で、すっぽん!と弾けるような大きな音がした。
驚いて男を見やると「世話になった」と快活に笑って店を出ていく。
健康そうに日焼けした右腕と、生白い左腕を交互に元気良く振りながら。

「いや金貸しってのは色々嫌なことも多かったがね。
 あれは何というか、良かったというか面白かった想い出だな」
お祖父さんは目を細めながら、この話をしてくれたそうだ。

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