真っ黒な布のような物
 ボーイスカウトで林間学校の引率をしていた時のこと。 
 夜も遅くなり、彼は各テントに消灯を命じて回っていた。 
 あるテントに向かった彼は、奇妙な感じを受けた。 
 他のテントは中で明かりが揺れているのに、そのテントだけは真っ暗なのだ。 
 意外に早く寝たんだな、と思い近寄って、目を疑う。 
そのテントは真っ黒な布のような物に、隙間なく覆われていた。
 何だこれは!思わず伸ばした手に、柔らかい和毛の感触がした。 
 次の瞬間、テントを覆っていた影は、ふわっと宙に舞い上がる。 
 目を丸くしている彼を残し、それは月夜を高く飛び去ったという。 
 「ごめんなさい、すぐに消灯します」テントから子供が顔を出し、慌てて言う。 
 どうやらその子たちは、あの影のことには気づいていないらしい。 
 彼は動揺を押し隠し、子供たちに「夜更かししちゃ駄目だぞ」と念を押した。 
その林間学校が無事終わるまで、彼はそこはかとなく不安だったそうだ。
出典:http://hobby5.2ch.net/occult/kako/1084/10843/1084366168.html
