山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

あの小父ちゃん、変!

      2017/04/04

342雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/27 01:25 ID:aoZTYLR+
知り合いの話。

彼女は幼い娘さんを連れて、山菜採りによく出かけているのだという。
その日も彼女は二人で近場の山に入っていた。
なかなかの収穫を上げて、下山している途中でのこと。

いきなり娘が足を止めた。前方、麓の方をじっと凝視している。
「どうしたの?」と聞くと、「あの小父ちゃん、変!」だと言う。
山道の前方を見やると、確かに小さな人影がこちらに向かって来ていた。
上下とも黒い服を着ていて、白い軍手がまるでそこだけ浮いて見える。
見るところ、蜂除け用の網がついた麦藁帽子を被っているらしい。
背中には大きな竹篭を背負っているようだ。
しばしば、そこいら辺りで見かける農夫の姿と大差がなかった。

「何が変なの。失礼なこと言っちゃダメ」
彼女がそう諭すと、娘は強情な顔をして首を横に振り、奇妙なことを言う。

「だってあの小父ちゃん、さっきまで頭が無かったんだよ。
 私たちを見て、慌てて背中から頭を出して、身体に載せてたんだもん」

さては、篭から麦藁帽子を出した動作を、そのように見たのだな。
そう考えた彼女は、苦笑して娘の頭を撫でた。
とにかく失礼なこと言っちゃダメですよ、と釘を刺す。

343雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ :04/05/27 01:26 ID:aoZTYLR+
(続き)
しばらくして、その人影とすれ違った。
母子は快活に挨拶したが、相手は軽く会釈しただけだった。
目を合わせたくないかのように、俯いたまま無口で横を抜けていく。
えらく無愛想な人だなと思い、彼女は相手の顔をじろりと見た。

次の瞬間、ひどい違和感を感じる。何だ?
すぐにその理由に気がつき、全身が凍りついた。
網の奥、麦藁帽子の下の顔。

そこにあったのは、マネキンの頭部だった。

足を止めるのも恐ろしく、娘の手を引いたまま下り坂を歩き続ける。
背後の足音が小さくなっていくのが、無性にありがたかった。
麓についてやっと振り返ると、すでにさっきの男は影も形も見えない。
腰が抜けてへたり込むと、彼女に向かって娘が言う。

「ほらね。言ったとおりだったでしょ!」
娘は鼻を膨らませ、誇らしげに胸をそらしている。
どうだと言わんばかりのその姿に、彼女の恐怖心も霧散してしまい、
思わず苦笑してしまったのだそうだ。

以来彼女は、娘と二人きりで山に入らないように注意しているという。

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出典:http://hobby5.2ch.net/occult/kako/1084/10843/1084366168.html