山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

草の葉を見ていると、多くの水滴が光っているので集めてみた

      2016/02/24

900: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/08/18(木) 21:48:50 ID:9Rlfs/Gh0
夜明け前に雨が上がり、空気はしっとりした匂いに
満たされている。
少しばかり湿気がはしゃぎ過ぎ、空気が濃密に過ぎるようだ。
気持ちよくなるのは、湿気が落ち着いてからだ。
夜が明ければ、夏山としては上々の朝になるだろう。

湿った空気の中のテント特有の不快感があり、眠れなくなった。
ごそごそと這い出し、東側の空が少しばかり明るいのを見て、
まだ早いが、朝飯でも食うかという気になった。
何はともあれ、キジ撃ちだ。

しゃがみこみ、斜面の草の葉を見ていると、多くの水滴が光っている。
わずかな光をはね返し、屈折させ、ふるふるした光を放っている。

これを集めてみよう。
不意に、そんな気が起こった。
小さなお宝でも拾った時のために持ち歩いている、小さな薬ビンを
ザックから出し、握りしめ、草の下にあてがい、指先で草をはじき、
ぽたたっと垂れる水をビンで受けた。

901: 全裸隊 ◆CH99uyNUDE 2005/08/18(木) 21:49:39 ID:9Rlfs/Gh0
目の前に草はいくらでもあり、その全てに水滴が貼り付いている。
ビンの中、水が少しずつ増え、きらめきを増した。
なぜか、水集めに必死になっていた。
光る朝の空気が、草から水滴を散らしてしまう前に、少しでも多くの
水をビンに収めなければという、奇妙な切迫感があった。
何かおかしいという意識は確かにあったが、水を集める手が
どうにも止まらなかった。

薬ビンの半分以上まで水が入った頃、空気が変わり始め、草の水滴は
見る見る姿を消していった。

山を降りると、水は薬ビンもろとも、無くなっていた。
途中、どこかの木陰で、誰かにそっと手渡したような気はするが、
確かな記憶ではない。

以来、水滴集めに精を出した事はない。

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出典:http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1121734649/