少年が後を歩いてきて歩くのを止めると、向こうも止まって私の顔を無言で見つめ返してくる
2015/12/13
遅レス、申し訳ありません。
確かに彼は、神様の使いかも知れませんね。神様そのものなら女性だと思います
し(私が彼に会った山の神様は女性だそうです)。
きっと、神様に何かの用事を言い付けられて行く途中か帰る途中に、魚が釣れな
くて文句垂れてる私を、見るに見かねたんじゃないかと思います(笑
あの後、「ウメガイ」について調べ、画像も見ました。しかし、多分違う種類だ
と思います。ウメガイは柄に近付くにつれて幅広になるみたいですが、私が見た
ものは柄の部分に至るまで、一定の幅を保っているものでした。
これだけだと何なので、もう1つ話をさせて頂きたいと思います。ただ、この話は
自分の体験ではなく人から聞いた話です。本当なら実体験の方が良いのですが、
私が体験した話といえば>>562の話ぐらいなので…。
私の父親は山好きです。当然、山関連の友人も多く、私も山へ行く度にそうした
方々と話をしました。そして、その友人の中にAさんという方が居ます。私が彼と
最後に話をしたのは高校生の頃です。高校卒業後、進学の関係で地元を離れてから
は一度も会っていない上、結構な年齢に達していた筈なので今は亡くなってしまっ
ているかも知れません。
Aさんは県内でも山深い山村の出身で、実に色々な話を知っていました。私にも沢
山の話を教えてくれましたが、その中でも印象深い話をさせて頂こうと思います。
「あれ?気のせいかな…」
そんな事を1人で呟きながらも釣りを続行しましたが、やがて再び場所を移動し
ようと考え、更に上流へと歩き始めました。
『ここいら辺じゃ駄目だ。今度はずっと奥の方まで移動してやろう』
そう考えながら、川沿いを若干早足で移動します。すると今度は、私の背後を
付いてくる足音がします。
「なんだ、お前も移動すんの?」
と言いながら、また後ろを振り返りました。
すると、今度は確かに人が居ました。ですが、それは友人ではありません。年
の頃は15~16でしょうか。少年が1人、私のすぐ後を歩いてきます。私が思わ
ず歩くのを止めると、向こうも止まって私の顔を無言で見つめ返してきました。
「なんだか変わった服を着てるなぁ」
というのが、私の第一印象でした。下半身はズボンに近いものを履いているの
ですが、上半身は裾の短い着物を着ています。腰には地味ではあるが、立派な
ナイフ…と言うより、短刀(短剣?)のようなものをぶら下げています。
私は彼を見ても全然驚きませんでした。近くで映画の撮影でもやってるのかと
思ったのです。
今から考えると、あんな田舎の山奥で映画の撮影なんてやってる筈がありませ
ん。それでも、当時の私はそう考えました。
何故そう考えたかと言いますと、まず彼の衣装が、確実に現代のものではない
事。また、背中にまでかかるぐらいの黒い長髪をしていました。更に、これは
私の主観が入ってしまうのですが、その少年がかなりの美形で、俳優と思った
からです。美形とはいっても、ジャニーズ系のような顔とは違うタイプです。
意志の強そうな顔、と言えばいいでしょうか。そんな感じの顔でした。
私は彼に聞きましたが、何も答えません。少々困ったものの、『こっちだって
朝早くに起きて釣りしてるんだ、一匹でも釣らないと割に合わない』と思い直
し、さっさと上流へ歩を進めました。
やがて、かなり上流まで到達した私は喉が渇き、腹も減ってきたので携行して
きた食料を食べる事にしました。適当に腰を下ろし、自分で作った握り飯を食
べていると、下流から人が歩いてきます。さっきの少年でした。
私はどう声を掛けて良いか分からず、黙々と握り飯を食べていました。少年は
私のすぐ近くに腰掛けると、こちらを興味有りげに見ています。
『なんなんだよ、気味悪りぃな。言いたいことがあるならさっさと言えよ…』
内心ではそう思いつつも、当たり障りの無い事を話し掛けました。
「もしかして、釣りに来たの?」「その服、どこで売ってるの?」「他に一緒
に来てる人は居るの?」…全て無言で返されました。
やがて、彼の視線が私の持っているペットボトルに注がれているのに気付きま
した。事態の打開を図りたいと思っていた私は、「喉渇いてる?あげるよ?」
と言って手渡しました。
彼はペットボトルを手に取ると、それを太陽に向けて光の反射を楽しんでるよ
うでした。『変わった奴だなぁ…』と思っていると、今度は向こうが私に茶色
の塊を差し出してきました。どうやら食べ物らしいというのは分かったので、
一口齧ってみました。
少々粉っぽいが、僅かな甘みがある。決して不味いものではありませんでした。
「美味しいねぇ、これ。自分で作ったの?」と言うと、初めて「うん、そう」
と答えてくれました。
と、とても喜んで見せてくれました。両刃のもので、やはりナイフというより
は短剣でした。若干青く光っていて、よく手入れされてる感じがしました。
どこで買ったのか聞くと「譲って頂いたもの」と、誇らしげに言いました。
彼の話はまだ続きます。その殆どは山の話でした。そして、この山がいかに豊
かな山であるか、を私に聞かせました。他にも、怪我で動けなくなった人に手
当てをしてあげたとか、山に迷い込んで泣いてる子供を助けてあげたとか、こ
の山に逃げてきた男女を匿ってあげたとか。
今考えれば、きっと古い時代の話なんだと思います。「草履も脱げて…」とい
う一節があったので。ただ、その時は珍しい話に聞き入るあまり、突っ込みを
入れるのを忘れていました。
どれぐらい話していたか…突然、「そろそろ行かないといけないから」と言っ
て彼は立ち上がりました。
別れ際に彼は「今日はすまない。だが、明日もここへ来てみてくれ」と言い残
し、上流へと歩いて行ってしまいました。
結局、その日は一匹も釣れませんでした。他の友人は、小ぶりながらも何匹か
釣っていたというのに。
そして、友人達にこの話をしたものの、誰もその少年は見ていませんでした。
家に帰った私は、両親にこの話をしました。母親は「それって変な人なんじゃ
ないの?」といった感じでしたが、父親は黙って聞いてくれて、「じゃあ、明
日そこに行ってみようか」と言ってくれました。元々山好きな父親(私が山好
きになったのも父親の影響)なので、まともに相手してくれたのかも。
道程も、車だとあっと言う間です。川に着くと、早速上流へと登り始めました。
やがて、昨日少年と話した辺りに辿り着きました。
私と父親は早速釣り糸を垂れました。が、やはり釣れません。
『なんだ、やっぱり駄目じゃないか…』と思った時。竿に強力な当たりがきま
した。「川魚でこんな強力な引きなんて、おかしいぞ?」と思いながらも、何
とか引き上げてみると、何と1尺超えの岩魚でした。
それからは、面白いように岩魚が釣れました。しかも、その殆どが1尺前後の
ものばかりです。最終的には、8匹もの岩魚を釣り上げました。
自分で釣り上げたとはいえ、信じられない出来事に唖然としてると、父親が
「頂いたからにはお礼をしないと」と、帰り際に山の麓にある小さな祠のよう
な場所へ、一升瓶のお酒を置いていました。
この出来事から何年も経ちましたが、未だに彼が何者だったのか分かりません。
聞く所によれば、山の神様は通常、女性なんですよね?それが男性、しかも
少年というのは聞いたことがないので…。
東北某県、某山の神様は少年ってことなんでしょうか。