バンドリ(ムササビ)狩り
地元の新聞からの抜粋。
あんまり怖くない。もーしゃけねー。
平野惣吉さん(明治33年生まれ)が、山にバンドリ(ムササビ)狩り
に入った晩のこと、一匹捕って山の斜面で休んでいると、向こう側の斜面
で誰か二人がしゃべりながら奥へ入っていく。バンドリの狩りは夜だから
相手の姿は見えない。声は聞こえたが話している内容はわからなかった。
平野さんは「こんげの所へ、俺ばかりじゃなく誰かも来たわい」と思って
いた。あんまり人の入らない沢だったので、気持ちが悪いと思っていたと
ころへ人の声がしたので、ほっとしていた。
奥には滝つぼがあって、針葉樹林になっており、さっきの二人は行き進むうちに、
どうしても平野さんのところへ出て来なければならない地形になっていた。
ところがいくら待っても二人は出て来ない。にも拘わらず喋り声は聞こえてくる。
その時初めて平野さんは「これは人間じゃないな」と直感したという。
気味が悪くなったので、バーンと一発鉄砲をぶっぱなしたら、それまで聞こえていた
「ウンガ、ウンガ、ウンガ」というような話し声が、ピタッとやんだ。