お祭り中、神様に神かくしにあった話
新潟県東頸城郡松代町。
あのね、今月(五月)八日が松苧神社の礼祭なんですよ。
そこへみんな、ホラ、 一人で歩けるようになると御参りにいくんですよ。
そうすっと、その子が、あのしんれいの大工さんっていう家のお父さんの子供の時分でしょうね。
なんか迷子してしまって山ん中へ、奥へはいっちゃって、もう父と一緒に帰らんじまったそうです。
そしてみんな大騒ぎしたんです。昔のホラガイ、ポッポー、カンカンってね、耐念仏カンカンってたたいた。わたしっち子供の頃だからポッポー、カンカンってそれだけよく覚えてます。
三日三晩も松苧山の山を探したけれども見つからなかった。
四日目だったかね、やっとこさそこ道でて来たそうです。てつたろうがね。
そして「お前どうして三日三晩も何食べてた」てったら「女のきれいな人がね膝枕して、しっばつ(いがほおずき) っていうおいしいもの食べさせてくれた」そう言ったそうです。
そして無事に家へ帰ったそうです。
女の人は自い着物着ていて、それは近くに祀ってあるヌナガワヒメではないかということです。
「奴奈川姫」は『古事記』や『出雲風土記』などの古代文献に登場する高志国(現在の福井県から新潟県)の姫であると言われています。
出典:現代民話考 1 河童・天狗・神かくし/松谷 みよ子