不時山に入ると

不時山（ふじやま）っちゅうのはありますわ。
ワシも昔、材木屋しとったさかい、入札の時はナンやカンや
あった所やって、割に嫌うんや。
売ったかて高ういきよらんのや、ええ値付けへんのや。
不思議なもんやけどな…。
今はもう山売るっちゅうたら、誰かてすぐ買いますもんな。
せやけど昔は「不時入る山」で誰が怪我したとか、木の下に
なって死んだとか、そゆことあるよってにな、嫌いましてんよ。
あれ、誰かがいっぺん怪我したら、そんなこと言い出すんや。
そやけどな、山によって何や気色悪い山かておますわい。
不思議とおますんや。
ワシかて、そう云う所へ仕事に行ってたことあんやけどもな、
ホンに気色悪いんやなあ…。
せやけどな、そんなこと言うとったら山へ仕事に行かれへん
よってにな、それを嫌うっちゅう言い伝えだけのこっちゃな。