緑色なもの
私の体験した話。
学生時代、一人で山中を縦走していた時のこと。
一人用テントで休んでいたのだが、夜中に妙な気配を感じて目が覚めた。
テントと身体の隙間に、何か緑色なものがうずくまっていた。
ガスのような感じで向こうが透けて見えた。
思わず手で押すと、柔らかく弾力のある手応えがかえってくる。暖かい。
力を入れると、緑色の中に手がずぶっと埋まってしまった。
緑色の何かは慌てたように、テントの隙間から抜けて消え去った。
テントの中には澄み切ったオゾンのような匂いが残されていた。