山間の町でコンビニを経営している
2015/12/31
彼は小さな山間の町でコンビニを経営している。
店には季節の変わり目、必ず真夜中に訪れる常連の客がいるという。
その客は背が高く、いつ来ても同じ服装を着込んでいる。
見た目はごく普通の人だが、いつも大きなマスクと帽子を着けているので、
どのような顔をしているのかはよくわからない。
深夜にもかかわらず、毎回大きなサングラスをかけているのも少し気になる。
加えてまるで農作業したばかりのような、優しい土の匂いがするのも奇妙だ。
決まってミネラルウォーターのペットボトルを二本、米を一キロ、炒り子を一袋、
そして塩を一瓶購入する。
商品を手提げ袋に納めたその客は、店前の県道を横切りガードレールを乗り越え、
休耕田を突っ切ってから、深い竹薮の中へ消えるそうだ。
あの奥って確か、寂れた御社以外は何もない筈なんだけどな。
そうは思うものの、お客ということには間違いない。
だからあまり深く考えないようにしているのだという。