包帯やらガーゼやら用意する細君
2015/07/14
いつものように山登りの準備万端ととのえた夜、
彼が地図を眺め明日のルートをおさらいしていると、玄関で物音がした。
そっとドアを開けて覗くと、寝ていたはずの妻がごそごそ何かしている。
彼「な、なにしてんの?・・・」
妻「ん・・・なんとなく。入れといた方がいいかな~って思って・・・」
寝ぼけ眼の妻が、ザックに包帯やらガーゼやら詰めていた。
一体いくつ入れたのか、ザックはぼこぼこに変形し膨れ上がっている。
これが必要な事態って、いったいどんな状況なんだ?
ぞっとした彼は、その登山を取り止めたそうだ。
彼女曰く、勘の働く時は常に「なんとなく」なんだという。
漠然と、こうした方がいいかなぁと思うだけなんだそうだ。
残念ながら、子供を産んだ後、その能力は徐々に弱くなったそうで、
今ではほとんど、その力が働くことはないという。
しかし最近、彼女は不思議な体験をした。
ベビーカーを押しながらスーパーへ買い物に行っていると、携帯が鳴りだした。
彼女が出ると、相手は市内の病院の看護婦であると名乗り、
彼が交通事故にあい手術が必要になるので、至急病院へ来て欲しい、と言った。
動転した彼女は大慌てで病院に駆け付けた。
幸い、命に別状はなく足の骨折だけであり、手術も無事に終わった。
手術室から出てきて照れくさそうに笑った彼を見て、
彼女は思わず泣いてしまったという。
ところで彼女はひどい機械音痴である。
携帯も苦手で、主婦になってからは家に置きっぱなしだそうだ。
だが、その着信音はベビーカーから聞こえてきた。
1歳にならない娘が、にこにこしながら、よだれだらけの手で携帯を持っていたという。