伸びる影
彼女がまだ幼い頃、山の棚田で不思議なものを見たという。
夕方の畦道を里の方へ下って、家へ帰る道の途中。
ふと気がつくと少し先の道端に、人影が現れていた。
頭の先から足元まで墨を流したかのように、全身が真っ黒だった。
奇妙なことに、ぶわぶわと、全身が脈動していたらしい。
「誰だろう?」そう思って顔を見上げたそうだ。
すると、向こうは見られるのが嫌だというように背筋を伸ばした。
同時に、その身長がぬっと伸び上がった。
彼女が目を上に向けるのに合わせて、どんどん背が伸びて高くなっていく。
意地でも顔を見てやろうと思い切り反り返る。
無理をし過ぎたか後ろに転倒してしまい、ぺたんと尻餅をついてしまった。
その途端、影ははじけて霞のように空へ溶け、消えてしまったという。
家に帰ってその話を家族にしたところ、祖父から頭をなでられ言われた。
「ひっくり返って助かった。良かったな」
ただ祖母が青い顔をして、彼女に塩をふり掛けたのには参ったそうだ。
当時は何とも思わなかった彼女だが、
「もしもあの時転げていなかったら、一体どうなっていたんだろう?」
と最近になって気になり、仕方がないのだという。
見越し入道だっけな。
あれ、見上げれば見上げるほど伸びて、
ひっくり返ったら命をとられるって書いてあった。
で、それを避けるには「見越し入道見越したぞ」
って言えば消えるって…
もしかして、昔の見越し入道だと
「ちっ。見越されたか」とかってあきらめてて、
今の見越し入道に言うと逆切れするのかな。
DOQみたいにw
出典:http://hobby5.2ch.net/occult/kako/1084/10843/1084366168.html