山にまつわる怖い・不思議な話(山怖まとめ)

山の怖い話、不思議な話をまとめています。

首だけの鮎

   

快晴の初夏、鮎釣りにでかけた。
鮎ってやつは縄張り意識が強い。養殖鮎を生きたまま釣り針にかけてオトリとし、
周りに剥き身の針を流しておくと、ケンカしてきた天然鮎が引っかかるという寸法だ。
朝から渓流にスネまでつかり鮎釣りを楽しんでいた。

ふと気付くと、普段釣り人でにぎやかなその川に、自分ひとりだけになっている。
まだ昼過ぎだというのに、車一台通らない。
奇妙な静けさに、彼は少々薄気味悪くなった。

その時、サオが大きくしなった。
かつてない強いアタリに、彼は大物を確信し有頂天になった。
喜びいさんで、糸をたぐり寄せた途端、唐突に抵抗がなくなった。

がっかりした彼がサオを片付けようとして見た物は、
頭だけ残して食いちぎられたおとり鮎だった。
首だけの鮎は二、三回口をゆっくりパクパクさせた後、息絶えた。
突然、すさまじい冷気が川下から押し寄せ、彼は大慌てで家に逃げ帰った。

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出典:http://hobby5.2ch.net/occult/kako/1084/10843/1084366168.html