行方不明者の捜索
 行方不明者の捜索のため消防団と警察で山狩りを行うことになった。 
 二人一組で無線を携帯して山に入る。 
 30分後、本部に行方不明者の遺体を見つけたという連絡が入った。 
 あまりの早さにいぶかしみながらも、十名余りが現場に向かった。 
 狭い山道をしばらく登ると、連絡を入れた団員が立っていた。 
 遺体は崖の下だと言う。 
 「崖の下からだと無線が届かなかったんで、俺だけここまで登って来たんです」 
 もう一人は遺体の側で待っているらしい。 
 「あいつ、山狩りが始まった途端、真直ぐ此所へ来て遺体を見つけたんですよ」 
 しかし、崖下には遺体の他には誰も居なかった。 
 しばらく現場周辺を探したが見つからない。 
 奇妙なことに、件の団員にパートナーの名を聞いても思い出せないと言う。 
 それどころか、顔も憶えていないらしい。 
 分団の顔見知り同士でペアを組んでいるので、そんな事はあり得ないはずだった。 
 「ペアを組んだ時や山に入った時も、全然違和感なかったんですけどね…」 
 よくよく調べてみると、山狩りに参加した全員が、彼の顔を思い出せない事が分かった。 
彼らを遺体の側に導いたのは誰だったのだろう?