桜の花びら
304 :聞いた話 ◆UeDAeOEQ0o :04/09/03 00:12 ID:+djG5rAi
年寄りに聞いた話。
初夏のある日、山で仕事をしていると桜の花びらが落ちてきた。
不思議に思って首を巡らせたが、辺りには桜の木の一本すら見当たらない。
ひらり ひらり
薄桃色の花びらは、夕刻になって山を下るまで、どこからともなく降り続いた。
里に入ってすぐ、地蔵堂の前でしゃがんで手を合わせている妻に出会った。
「おめでた、ですって…」
小さな声でそう告げると、妻は少しはにかみながら微笑んだ。