世間をあっと言わせようと、山火事をおこすことを思いついた。
2015/11/20
彼はなにをしてもうまくいかなかった。おまけに孤独で、恋人はもちろん、友人すらひとりもいなかった。
そんな彼が一度世間をあっと言わせようと、山火事をおこすことを思いついた。
目立つことがしたかったのだそうだ。
山へ入り、よく燃えそうな枯れ木をみつけ火をつける。ところが…。
いったんは燃え上がるものの、すぐに鎮火してしまう。不審に思いながら、別の枯れ木でやりなおした。
だが、またしても火はすぐに消えてしまった。
点けては消え、点けては消え…。
そんなことがずっと続き、さすがにしつこい性格の彼も疲れてしまった。
一息いれようと、近くにあった大きな石に腰掛けた時、ふと、何かの気配を感じた。
辺りを見回すと、一羽の雷鳥を中心に幾多の顔が彼を見て大笑いしていたという。
彼がほうほうのテイで逃げ帰ったのは言うまでもない。
のちにわかったことだが、彼が腰掛けた大石は、地元では「あぼん石」と呼ばれており、
それに触れた者は一生不幸がつきまとうといわれている。