黒い石碑
小学生の頃、彼の町ではインフルエンザが大流行した。
薬も効かず次々と学級閉鎖となる中、彼は不思議な夢を見たのだという。
夢の中で、彼はいつも遊んでいる裏山の神社にいた。
そこの境内には何も置かれていなかったのだが、夢の中では黒い大きな石碑があり、
表面に何か字のようなものが彫られていた。
何かの漢字熟語だったらしいが、彼には難しくて読めなかったそうだ。
ただ、ひどく禍々しい感じがして気に入らなかった。
そこで彼は足元に落ちていた炭を使い、石碑に落書きをしたのだという。
気合を入れて書きまくり、気がつけば石碑の表面は、意味のない落書きで埋め尽く
されていた。
彼は自分の成果に満足して笑みを浮かべた。
そこで目が覚めた。
その翌日からインフルエンザは急に勢力が衰え、五日もしないうちに患者は一人も
いなくなった。
自分でも知らないうちに、実は大変凄いことをしちゃったみたい・・・。
他人にこそ言わなかったが、彼はこっそりとそう考えている。