おままごとの食卓
伯母(今度は母の妹の方)の家は、5分も歩くとチョウコウザンという山がある場所だった。
冬休みに従姉妹と3人でその山にはいり込んで遊んでいたら、
「あそこは危ないから、行っちゃ駄目」と言われていた、小さめのダムがある川に
行き着いた。
冬になると、その川は干上がってしまい、ダムもお役ごめん。
20センチぐらいの幅のコンクリートのダムの上を、度胸試しをかねて渡るという
今から考えると危ない遊びをするのが楽しかった。
その日も、3人でダムの方に遊びに行った。
すると、ダムの上に、何かが置いてある。椿の葉っぱ、赤い椿の花、
木の皮で作った、おままごとの食卓のようだ。
その上には、松葉のお箸とプラスチックのおわんが置いてある。
岸から見たおわんの中には、椿の葉っぱとばらばらになった赤い椿の花。
「わ、きれい~」と、おわんの中を覗き込んだ従姉が悲鳴をあげた。
プラスチックのおわんを放り投げて、泣きながらもどってくる。
「どうしたの?」と聞いても
「○○ちゃん、帰ろう。もう帰る!」
と、言うばかり。
しかたがないので、3人でもときた道をもどっていった。
帰りの道でふるえながら従姉が言った。
「あのおわんの中、椿の花の下にすずめの首が2つ入ってた…」
それ以来、ダムのそばには二度と遊びに行かなくなった。
ただ、それだけの事なんですが…。