暮れの茜空の中、黒い影が必死に羽ばたいていた
2016/03/22
774: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/12/01(木) 00:00:38 ID:2fYbLf8z0
同僚の話。
山里で道路工事をしていた時のこと。
ギャアギャアとけたたましい鳴き声が聞こえた。
烏だ。夕暮れの茜空の中、黒い影が必死に羽ばたいている。
何を騒いでいるんだろうと見ているうち、おかしなことに気がついた。
烏は何かから逃げるように力一杯羽を振っている。
しかし、その身は少しも前進していないのだ。
まるで見えない綱に引っ張られているかのように。
やがて力尽きたのか、烏は羽ばたきながら竹薮の中に引き込まれていった。
ふっつりと鳴き声も聞こえなくなり、それきり辺りは静かになる。
仕事が終わってから、その竹薮に足を運んでみた。
黒い羽根が少し散らばっていたが、他には何も見えなかったという。