「狐火」とか「狐の嫁入り」と言われる火
2017/11/22
徳島県阿南市長生町三倉の話。
昭和十八年頃の話。阿南市地方では、狐の嫁入りという火が時々みられる。
夜、真っ暗な山の中腹に、全く人家もないというのに、点々と十個ぐらいの火が点減し、
それが次第に道を登るように上っていき、三十分ぐらいですうつと消えてしまう。
近くの山でなく、 一キロぐらいの離れた山にみられる。
この火を「狐火」とか「狐の嫁入り」というと共に、死人の出る前兆で、
狐が葬式をしているともいわれた。
事実、昭和十八年頃から二十年頃にかけて、長生の街から三倉に帰る途中でよく見かけた。
そうすると、必ずその火のでた山の下の集落で死者があり、戦死者のでたうわさが伝わってきた。
この火は見ても不幸を呼ぶためか、他人にしゃべったらいけないともいわれていた。
出典:現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂 (松谷 みよ子)