ひそひそ
趣味で山登り(トレッキング程度)をするが、ある友人と私と
二人で近郊の山に登った時のこと。左右が杉林そびえる尾根の
狭い一本道を私が前になり歩いているとなにやら耳元のような
遠くからのような声の発生元がはっきり分からないようなものが
ひそひそと聞こえた。歩きながら後ろをふりむくが友人がいる
だけで前後には誰もいない。友人に
「何か言った?」と聞くと「いや、何も」と答え、私がさらに
「何か聞こえないか?」というと「別に」とぶっきらぼうに答えた。
友人は霊感があり「もしかして霊?」なかば冗談で聞くと
「いや違うよ何も感じないよ」と言って先になって歩いて行った。
後日、友人と会い、その時の話になり友人が言うには、
やはり、霊がいたとのことだった。私が声が聞こえた時、昔の
山伏のような姿をした男が私をにらみつけ経文のようなものを
唱えながらついてきていたとのことだった。友人のそばにも来た
そうだが友人は知らないふりを決め込みんだ(何もしてやれないので)。
「何で教えてくれないんだ」と言うと友人は
「気づいちゃうとついてきちゃうからね」
と言って微笑むだけだった。