『何か』
炭焼き爺さんの昔話
山狩りちゅうのをしたことがある。
里で放火した奴が山に逃げ込んでな、警察の衆じゃ見つからんとお願いされたんじゃ。
きこりと猟師、炭焼きと山に慣れた衆で山に入ったんじゃ。
警察の衆は焦ってたがの、放火犯の逃げ込んだ山聞いてなすぐ見つかると思ったわ。
案の定すぐ見つかったわ。
その山は地形の関係と『何か』の関係で行き着きやすい場所があるんじゃ。
奴を見つけたときは駐在さんに抱きついてきたわ。
駐在さんは変な顔しとったけどな、ワシらは納得したわ。
そん時に山狩りに参加してた奴らは全員『何か』に追っかけられたことがあったんじゃ。
ワシも追っかけられたことがある。
昼でも夜でも初めて一人でその山に入った奴は追っかけられるんじゃ。
ただし1回だけじゃ。きまって山の中腹の平場にでる。
『何か』は足音と唸り声だけなんじゃが・・・
昼間でも怖いのに夜にやられた放火犯は怖かったじゃろうに。